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もうひとつの空 有元利夫 [私の読書]

『もうひとつの空-日記と素描 有元利夫』
1946年に生まれ、“「星月夜」と題されたその絵は、糸杉のうねりに星がうずまいている深い青と黄色の単純で強烈な色彩と平面性の強い明確な画面で、小学生の僕をとりこにしました。”小学生でゴッホに夢中、1976年4月画家を志した日から1984年の10月21日(日)までの日記が書かれている。今日13.11.01、この本を読み終えた。
1ゴッホ星付夜_.jpg

有元利夫の短い人生、1946年から1985年2月までの38年間の人生、こころの移り変わりを知りたくて読んだ。


1976年4月11日(日)30歳
明日12日 会社を正式にやめて11日、芸大の講師になるか、無職に絵描きになるか決まる。5年先にはどうありたいか、という視点で、今を過ごしたい。

1979年1月2日安井賞特別賞受賞後
勉強を忘れずに、貧欲に力をつけよう。今年は33歳になる年だ。40歳まであと7年。35歳までに何か出来るかどうか!良い作品を造りたい。良い仕事をしたい。

6月12日良い絵を描くためには色々なことが必要だと思う。最も大切なことは、気ままな、勝手な時間をたくさん持つ事と思う。

1983年3月23日(木)
ムンクは、イメージや感覚に図像を与えた。人は始め、強いドラマ性にひかれる。が、それを本来的に強めるのは、色や型であることに気付く。そのうち、内にあるドラマや創造性は弱まり、色や形の強さが残る。

7月22日(金)腹を決めて、点数などどうでもいいから、こわせるだけこわして、徹底的にやりぬいた作品を造ろう。文句を言わせない作品!!
7月29日(水)
…ぼんやりとした大きなイメージは強いのだけれど、今日、今、何がしたいのか、どう描きたいのか判らない。こんな絵が描きたいというイメージがもう一つはっきりして来ない。…

この7月頃から体に異変が起きたのか、彼には残りに人生は分からない、彼の言葉にだんだんいら立ちと激しさが感じられる。

『見え隠れの美しさ』
見え隠れという言葉があるが、それは見え隠れの美しさである。ボディラインが見えるようでいて見えない。感じさせないようでいて感じさせる。計算された服がその美しさをつくり出すのである。そんな服を選びとるのもまた賢い人の分別なのだろう。

12月5日(月)
37歳になってからの二カ月余り、単純な描く意欲がフツフツしてくれないようだ。…不信、不安、だけが渦巻いてしまっている。自分を内側からつき動かしてくれるような(たとえそれが無知によるものであれ)強い意志、志向、好み、望みの不足!!
感性を洗ってみずみずしくしなければ、いろんな物、事、に本当の興味を持たないと。

1984年1月1日(日)37歳ベットが空きしだい正月早々入院である。…

4月12日(木)行きづまり、落ち込んでいた状態からなんとか抜け出した。…初めて、自分が少し判ったような気もする。自分の分までしか描けないし、本質的に楽しくないことは出来ない。出来る事の中できびしさを失わない事だ。他のものと比べてもしょうがない。うらやんでも、それが、自分なのだ。これはあきらめでない。自信を込めた満足感なのだ。

1984年10月21日(日)
展覧会も一応今回で一くぎり。これからは少しじっくり、仕事をしよう。展覧のためとか、何のためという気持をさっぱりとり払った所で仕事をしよう。…体調の方はハッキリしない。胆のうに何かあるのかも…。ここ一月ぐらい数値が上がりぎみで…。ここで、ゆっくりでもいいから、仕事がしたい。五年をひとくぎりにして二回、十年やれればある程度の作品を作れるのでは、などと言うきたいを持っている。

1985年、38歳、2月24日に他界


有元利夫さんは、本人が顔に似合わず「朝はバロック」バロック音楽が好き。
朝に限らず良く聞く。心臓の鼓動のように自然な通奏低音、さざ波のような装飾音、起きぬけにまず聞く音楽としてはこれ以上のものはないと思うのです。…
ということで、私も初めてバロック音楽のCDを買ってしまった。“バッハ(1685-1750)のヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロのためのソナタ”

《有元利夫の展示会》
 
小川美術館 2014年2月24日~3月8日
 
有元さんの作品が見られるのは、いつだろう、いつだろうと思っていたが、忘れたころにその日が訪れた。

小川美術館1JPG.JPG

小川美術館2JPG.JPG

小川展示JPG.JPG


有元利夫さんは、1946年生れ、私は4歳若いが、同世代だ。そして、同県の岡山県津山市で生まれた。そして、1985年、38歳、2月24日に他界した。命日を記念して、小川美術館で毎年1回のみ無料で彼の作品を見ることができる。
私も仕事の関係で近くに行き、偶然見つけた。3回彼の作品に接することが出来た。

《有元利夫展》

気になったことは、描かれている人物が女性か男性なのか。美術館の一番奥の部屋にあった2作品は、有元さんの奥さんに似ていた。すべてが女性ではない。どこの国の人か、日本人らしい顔もいくつかあるが、どうだろう?

はじめて原画を見た。展示の中には、好きな作品は3つ


1883年7月頃(36歳の時)考えていた、「見え隠れという言葉があるが、それは見え隠れの美しさである。ボディラインが見えるようでいて見えない。感じさせないようでいて感じさせる。」
他界する前の年、1984年の“7つの音”。この7つの赤い玉はどんな音がするのだろうか?
体調に異変、いら立ち彼の考える音は何だったろうか?
7つの音.jpg

そして、1980年“厳格なカノン”、ハシゴと彼の踏込み位置とがずれている。裾がハシゴの横バーで、表現が違うが、何か魅かれるものがある。
厳格なカノン.jpg

そして、1977年“花降る日”だ。螺旋状に頂上まで上がれるだろうと思うが、どうも上がれそうもないスロープだ。布地が見える、顔料が剥がれているように見えるのも気になる。
花降る日.jpg


展示されている絵で唯一1982年“ロンド”だけが、複数の人が描かれている。この4人は男性でもない、女性でもない中性、有元さんの分身かもしれない。複数だと何故か、落ち着いて見られるような気がする。
ロンド.jpg

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